月次の支払業務は、書類を受け取り、内容を確認し、一覧にまとめ、承認を取り、支払い、記録するという流れの繰り返しです。この流れの中で実際に自動化できる工程を、14に整理して構築した事例です。
自動化した14の工程
書類の受け取り・読み取り
1. 定期支払いの起票 ― 毎月・隔月・四半期・年次といった決まった支払いを、サイクルを判定して当月分だけ自動で起票します。「翌月末」「毎月25日」のような支払期日の計算も自動です。同じ支払いが二重に登録されないよう、重複チェックを組み込みます。
2. 請求書・帳票の読み取り ― PDFの請求書から、取引先名、金額、支払期限、振込先口座、インボイス登録番号をAIが読み取ります。フォーマットが取引先ごとにバラバラでも、書式を揃えてもらう必要はありません。
3. 書類の仕分け ― 届いた書類が請求書か、見積書や送付状などの別書類かを判別し、それぞれの保管先へ自動で振り分けます。AIが判断しきれなかったものは、勝手に処理せず人の確認待ちとして残します。
照合・整理
4. 取引先マスタとの照合・新規先の検知 ― 「株式会社」と「(株)」、全角と半角、スペースの有無といった表記の揺れを吸収して、既存の取引先か新規かを判定します。新規先は情報を仮登録し、担当者の確認が済むまでは支払い対象に含めない仕組みにできます。
5. ファイル名の統一と保管先の振り分け ― 「支払期日_取引先名_金額_書類種別」のような命名規則に自動でリネームし、支払方法別のフォルダへ格納します。後から探せない、命名が人によって違う、という状態を解消します。
6. 支払一覧表への転記 ― 管理表に1件1行で自動転記します。振込先情報はマスタから自動で反映し、元の書類ファイルへのリンクも紐付けるため、一覧から原本をすぐ確認できます。
チェック・検知
7. ダブルチェックの一次判定 ― 書類の原本と一覧表の記載内容(取引先名・金額・期限・口座番号)をAIが突合し、一致・不一致を自動で判定します。人はAIが印を付けた結果を確認するだけになり、全件を目視で照合する必要がなくなります。
8. データの整合性チェック ― 支払期日の想定とのズレ、来るはずの請求書の未着、契約サイクル外の請求、前月比で大きく変動した金額などを自動で検知し、レポートにまとめます。人が気づきにくい異常を、支払い前に洗い出せます。
9. 未着書類のリマインド ― 当月受け取るはずの書類のうち、まだ届いていないものを自動で集計して通知します。連続して未着になっている取引先も把握できます。
支払い・報告
10. 承認依頼文の作成 ― 当月の件数、合計金額、支払予定日を集計し、決裁者へ送る承認依頼の文面を自動で作成します。担当者はそのまま転送するだけで済みます。
11. 銀行振込データの作成 ― ネットバンキングに取り込む総合振込データ(全銀フォーマット)を自動生成します。口座番号や支店コード、受取人名などを事前に検証し、件数と合計金額が一覧表と一致するかを自動で検算します。
12. 完了報告の作成 ― 支払い完了分を集計し、報告文を自動で作成します。毎月の報告書づくりの手間がなくなります。
毎月の段取り
13. 月初の準備 ― その月のフォルダ階層と管理シートを、決まった構成で自動作成します。毎月の準備作業を、実行1回に置き換えられます。
14. 進捗の通知 ― 工程ごとの結果を、都度ではなく月次のまとめとしてチャットに通知します。今どこまで進んでいて、何が止まっているかが一目で分かります。
自動化しない部分について
お金が動く操作と、取り消せない操作は自動化しません。実際の振込実行や最終承認は必ず人が行う構成とし、金額や口座情報に解釈できない値があれば処理を止める設計にしています。「全部を任せる」のではなく、「判断は人、作業はAI」という切り分けが、経理業務では最も安全で長続きします。
なお、14工程すべてを一度に導入する必要はありません。書類の読み取りと一覧表への転記だけ、振込データの作成だけ、といった部分導入から始めることもできます。